1. はじめに
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が多くの企業で叫ばれています。DXを成功させるためには、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、組織全体の変革が求められます。その中でも重要な要素となるのが「ITガバナンス」です。ITガバナンスの適切な構築・運用によって、IT投資の最適化、リスク管理、ビジネス目標との整合性確保が可能となり、DXの推進を加速できます。
「ITガバナンス」構築には、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立(必要に応じて抜本的・根本的変革も含め)し、常にその実態を掌握し評価をすることが重要となります。
本稿では、ITガバナンスの基本概念と、その代表的なフレームワークであるCOBIT(Control Objectives for Information and Related Technologies)を紹介し、DXを推進するための活用方法について検討します。
2. ITガバナンスとは
「ITガバナンス」とは、企業や組織がITを戦略的に活用し、リスク管理とコンプライアンスの確保を行いながら、ビジネス目標の達成を支援するための仕組みです。ITガバナンスの目的には、以下のようなものがあります。
DXの推進においては、これらの要素を組織全体で確立し、継続的に改善していくことが求められます。そのためのフレームワークの一つとして、COBITが注目されています。

3. COBIT ITガバナンスの標準的なフレームワークであるCOBITとは
COBIT(Control Objectives for Information and Related Technologies) は、ISACA(Information Systems Audit and Control Association)が開発した、情報および関連技術をうまくコントロールし、ITによって得られる利益を最大化するための補助として使われるフレームワーク(骨組み)です。
いわばITガバナンスの教科書ともいえるべき存在で、情報システムコントロール協会(ISACA)とITガバナンス協会(ITGI)によって1992年に作成が開始され、1996年に初版がリリースされました。
COBITは、ITの管理・統制を行うためのベストプラクティスを提供し、企業のITリスクの軽減や価値の最大化を支援します。
COBITのガバナンス目標とマネジメント目標は、5つのドメインに分類されています。
✓ ガバナンス目標は、①評価、方向付けおよびモニタリング(EDM)ドメインに分類されています。このドメインでは、ガバナンス主体が戦略的オプションを評価し、選択した戦略的オプションについて上級管理者を方向付けし、戦略の達成をモニタリングします。
✓ マネジメント目標は、4つのドメインにグループ化されます。
・②整合、計画および組織化(APO)は、I&Tの全体的な組織、戦略および支援活動を取り上げています。
・③構築、調達および実装(BAI)は、I&Tソリューションの定義、調達、導入、およびそれらのビジネスプロセスへの統合を扱います。
・④提供、サービスおよびサポート(DSS)は、セキュリティを含むI&Tサービスの運用上の提供と支援を扱います。
・⑤モニタリング、評価およびアセスメント(MEA)は、パフォーマンスのモニタリングと、内部パフォーマンスのターゲット、内部統制目的、および外部要件へのI&Tの準拠を扱います。

4. COBITを使ってDXを推進するためには
DXを成功させるためには、組織全体でITガバナンスを確立し、ITの適切な管理・運用を行う必要があります。COBITを活用することで、以下のようなDX推進のメリットが得られます。
①DXのロードマップ策定とIT戦略の整備
COBITのフレームワークを活用することで、DX推進のためのロードマップを明確にし、IT戦略をビジネス戦略と整合させることができます。
②IT投資の適正化とリスク管理
DXにはクラウドサービスやAIなどの新技術が関わりますが、これらの導入・運用におけるリスク管理が不可欠です。COBITを活用することで、リスクの可視化と適切な管理が可能になります。
③ITガバナンスの成熟度向上
COBITには「成熟度モデル」があり、組織のITガバナンスのレベルを段階的に向上させるための指標が提供されています。これにより、組織のDX推進力を高めることができます。
④データガバナンスの強化
DXの鍵となるのはデータ活用です。COBITのフレームワークを活用し、データ管理や情報セキュリティの強化を図ることで、信頼性の高いDX環境を構築できます。
5. 終わりに
DXの成功には、ITガバナンスの強化が欠かせません。そのためには、COBITのような国際標準フレームワークを活用し、組織全体でITの管理・統制を適切に行うことが重要です。本稿で紹介したように、COBITを用いることで、IT戦略の整備、リスク管理、IT投資の最適化、データガバナンスの強化など、DX推進に必要な要素を確立できます。
企業がDXを本格的に推進するためには、単なる技術導入だけでなく、ITガバナンスの仕組みを構築し、経営層とIT部門が一体となって取り組むことが求められます。
今後、ITガバナンスの重要性がさらに高まる中で、COBITを活用したIT管理の実践がDX成功の鍵となるでしょう。
三優監査法人のシステム監査部ではCOBITを利用した「ITガバナンス」の評価・導入支援を実施しています。
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近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が多くの企業で叫ばれています。DXを成功させるためには、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、組織全体の変革が求められます。その中でも重要な要素となるのが「ITガバナンス」です。ITガバナンスの適切な構築・運用によって、IT投資の最適化、リスク管理、ビジネス目標との整合性確保が可能となり、DXの推進を加速できます。
「ITガバナンス」構築には、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立(必要に応じて抜本的・根本的変革も含め)し、常にその実態を掌握し評価をすることが重要となります。
本稿では、ITガバナンスの基本概念と、その代表的なフレームワークであるCOBIT(Control Objectives for Information and Related Technologies)を紹介し、DXを推進するための活用方法について検討します。
2. ITガバナンスとは
「ITガバナンス」とは、企業や組織がITを戦略的に活用し、リスク管理とコンプライアンスの確保を行いながら、ビジネス目標の達成を支援するための仕組みです。ITガバナンスの目的には、以下のようなものがあります。
✓ IT戦略とビジネス戦略の整合性
ITの投資・運用が企業のビジョンや戦略に合致しているかを管理する。
✓ リスク管理とコンプライアンスの強化
情報セキュリティや法規制対応を強化し、リスクを適切に管理する。
✓ IT投資の最適化と価値創出
限られたITリソースを最大限に活用し、企業価値を向上させる。
ITの投資・運用が企業のビジョンや戦略に合致しているかを管理する。
✓ リスク管理とコンプライアンスの強化
情報セキュリティや法規制対応を強化し、リスクを適切に管理する。
✓ IT投資の最適化と価値創出
限られたITリソースを最大限に活用し、企業価値を向上させる。
DXの推進においては、これらの要素を組織全体で確立し、継続的に改善していくことが求められます。そのためのフレームワークの一つとして、COBITが注目されています。

3. COBIT ITガバナンスの標準的なフレームワークであるCOBITとは
COBIT(Control Objectives for Information and Related Technologies) は、ISACA(Information Systems Audit and Control Association)が開発した、情報および関連技術をうまくコントロールし、ITによって得られる利益を最大化するための補助として使われるフレームワーク(骨組み)です。
いわばITガバナンスの教科書ともいえるべき存在で、情報システムコントロール協会(ISACA)とITガバナンス協会(ITGI)によって1992年に作成が開始され、1996年に初版がリリースされました。
COBITは、ITの管理・統制を行うためのベストプラクティスを提供し、企業のITリスクの軽減や価値の最大化を支援します。
COBITのガバナンス目標とマネジメント目標は、5つのドメインに分類されています。
✓ ガバナンス目標は、①評価、方向付けおよびモニタリング(EDM)ドメインに分類されています。このドメインでは、ガバナンス主体が戦略的オプションを評価し、選択した戦略的オプションについて上級管理者を方向付けし、戦略の達成をモニタリングします。
✓ マネジメント目標は、4つのドメインにグループ化されます。
・②整合、計画および組織化(APO)は、I&Tの全体的な組織、戦略および支援活動を取り上げています。
・③構築、調達および実装(BAI)は、I&Tソリューションの定義、調達、導入、およびそれらのビジネスプロセスへの統合を扱います。
・④提供、サービスおよびサポート(DSS)は、セキュリティを含むI&Tサービスの運用上の提供と支援を扱います。
・⑤モニタリング、評価およびアセスメント(MEA)は、パフォーマンスのモニタリングと、内部パフォーマンスのターゲット、内部統制目的、および外部要件へのI&Tの準拠を扱います。

4. COBITを使ってDXを推進するためには
DXを成功させるためには、組織全体でITガバナンスを確立し、ITの適切な管理・運用を行う必要があります。COBITを活用することで、以下のようなDX推進のメリットが得られます。
①DXのロードマップ策定とIT戦略の整備
COBITのフレームワークを活用することで、DX推進のためのロードマップを明確にし、IT戦略をビジネス戦略と整合させることができます。
②IT投資の適正化とリスク管理
DXにはクラウドサービスやAIなどの新技術が関わりますが、これらの導入・運用におけるリスク管理が不可欠です。COBITを活用することで、リスクの可視化と適切な管理が可能になります。
③ITガバナンスの成熟度向上
COBITには「成熟度モデル」があり、組織のITガバナンスのレベルを段階的に向上させるための指標が提供されています。これにより、組織のDX推進力を高めることができます。
④データガバナンスの強化
DXの鍵となるのはデータ活用です。COBITのフレームワークを活用し、データ管理や情報セキュリティの強化を図ることで、信頼性の高いDX環境を構築できます。
5. 終わりに
DXの成功には、ITガバナンスの強化が欠かせません。そのためには、COBITのような国際標準フレームワークを活用し、組織全体でITの管理・統制を適切に行うことが重要です。本稿で紹介したように、COBITを用いることで、IT戦略の整備、リスク管理、IT投資の最適化、データガバナンスの強化など、DX推進に必要な要素を確立できます。
企業がDXを本格的に推進するためには、単なる技術導入だけでなく、ITガバナンスの仕組みを構築し、経営層とIT部門が一体となって取り組むことが求められます。
今後、ITガバナンスの重要性がさらに高まる中で、COBITを活用したIT管理の実践がDX成功の鍵となるでしょう。
三優監査法人のシステム監査部ではCOBITを利用した「ITガバナンス」の評価・導入支援を実施しています。
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以上